遠隔ロボットを用いた災害時マルチメディア情報収集技術
に関する研究開発

【戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)】
産学連携プロジェクト

NEWS
  • 平成15年度に本研究課題が採択されました.

    平成18年3月10日(金)に,(株)IHIエアロスペース川越事業所(埼玉県川越市)にて平成15〜17年度に開発した災害地情報収集ロボットシステムのプレス公開デモを実施しました.
    ●当日は,たくさんの方々に足を運んでいただきました.デモの様子はTV,新聞,インターネット,雑誌等でも報道・紹介いただきました.ここに御礼申し上げます.
    ●東北大学からのプレスリリースはこちらです.
    報道一覧および会場でのスナップ写真はこちらです.


    平成19年11月24日(土),サイエンスアゴラ会場にて,レスキューロボットに関するこれまでの研究開発の成果について講演・実演を行いました.

    「実演・情報通信技術を駆使したレスキューロボット」
    ●日時:2007年11月24日(土) 10:00-17:00
    ●会場:東京国際交流館 1F 多目的スペース
    ●内容:地震などの災害時に建物の中などに取り残された人を捜索するロボットシステムを開発しました.ロボットを遠隔操縦するために最先端の情報通信技術を駆使しており,技術講演とあわせて、ロボットのデモンストレーション(公開実験)を行いました.会場では,技術試験衛星VIII(きく8号)を用いてロボットを衛星通信により遠隔操縦して現場の状況を探査する実験も行い,開発してきたシステムが有効に機能することを確認しました.

    サイエンスアゴラとは?

    ◆2007年11月14日,報道機関向けに「お知らせ」を発表しました.

    ◆本研究開発は,総務省 戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)「研究主体育成型研究開発・産学官連携先端技術開発」の研究課題「遠隔ロボットを用いた災害時マルチメディア情報収集技術に関する研究開発」として平成15年度に採択されたものであり,今回の公開デモは,5年間の成果報告の一環として実施されました.

    ◆今回の実験は,初のETS−VIII利用実験となりました.ETS−VIII利用実験は,大学,研究機関,行政機関,企業などが衛星利用を促進する目的で実施する実験であり,総務省が募集し審査の上採択されたものです.実験実施にあたりJAXA関係者をはじめとして多数の方々のご協力をいただきました.御礼申し上げます.
  • 平成19年度末をもって本研究課題が終了しました.

  • 平成20年6月11日に,東京大手町にて戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)
     第4回成果発表会が開催され,本課題についての成果報告を行いました.
    成果報告会用プレゼンテーション資料


    プロジェクト終了後のロボット遠隔操縦実験

    ●2009年3月5日~7日
    仙台市天文台にて,「人工衛星きく8号を利用した災害救助・不整地走行ロボット遠隔制御技術の実験」と題して公開実験を行いました.
    ●2010年10月5日~10月8日
    超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を使って、東京ビックサイト・浅間山麓間で、不整地探査ロボットQuinceの遠隔制御実験を行いました。





  • 研究開発の概要

    本研究では,以下に示す4つのサブテーマの実現を目標として,産官学共同で,災害時マルチメディア情報収集技術の研究開発を進めております.
    1. 大規模震災等の広域災害において適切な情報収集を行うため、使用可能なさまざまな無線通信システムとネットワークを有機的に結合する危機対応通信管理技術の開発
    2. 災害現場における親子型移動探査ロボットの開発とその遠隔操縦技術の確立
    3. 効率的な環境データの収集と拡張現実感を用いた臨場感の高いデータ提示技術の開発
    4. 技術試験衛星VIII型 (ETS-VIII) 通信実験衛星を用いた技術実証,ならびに,そのために必要な通信機器、インターフェースをロボット(移動局)および操縦オペレーション室(固定局)の実装.

    東北大学 吉田・永谷研究室では,この中でも特に,2の「災害現場における親子型移動探査ロボットの開発とその遠隔操縦技術の確立」を目指し,不整地走行ロボットが、梯子を利用することで,搭載した複数台の小型ロボットを上層階から被災ビル内に展開し、倒壊建造物内の人命探索を行うロボットシステムの実現を目指しています.右図は,このシステムの実現イメージ図です.このシステムを実現するため,本研究室では,以下に示す項目の研究を実施しております。
    1. 高層階に小型ロボットを投入可能な不整地移動ロボット(親ロボット)の開発
    2. 屋内環境探索を行うための小型移動ロボット(子ロボット)の開発
    3. 移動探査ロボットの遠隔操縦に関する基礎実験
    (1)高層階に小型ロボットを投入可能な不整地移動ロボット(親ロボット)の開発

    屋外を移動探査する瓦礫移動ロボットは、路上に散乱する瓦礫の山を乗り越え、倒壊建造物へ接近し、建造物屋内へ人命捜索のための屋内探索ロボットを展開する役割を担います。そのため,同ロボットには,瓦礫上を移動する高い踏破能力が求められ、また急傾斜地を安定的に登る能力も求められます。一方、災害現場へは、ヘリコプターを用いた展開を想定しているため、一般的なヘリの可搬重量を越えないことが要件として挙げられます。これらを実現する不整地移動ロボット(親ロボット)の開発を、現在,IHIエアロスペースと共同で進めております。



    (2)屋内環境探索を行うための小型移動ロボット(子ロボット)の開発

    屋内環境探索を行うための小型移動ロボット(子ロボット)は,倒壊家屋内を探索する必要があるため,不整地走行能力が高く,かつ軽量であることが求められます.そこで,本研究では、不整地走行の実績が高いレスキュークローラ(テクノクラフト製 CV04)をベースに、以下の特徴を有する屋内環境探索を目的とした不整地移動ロボットの設計・製作を行いました。以下に、製作を行ったロボットの特徴を示します。
    1. 斜度60度の登坂能力を持ち「梯子を自力登坂して上層階に投入」が可能
    2. 人が利用する階段を踏破可能(右図参照)

      このロボットは、摩擦の大きいクローラを利用することにより、階段などの連続した段差も踏破することが可能である。この能力により、通常、人が生活している屋内環境を自在に移動することが可能で。
    3. フリッパクローラを用いることにより50センチメートル程度の段差を踏破可能

      このロボットは、前後にフリッパクローラ(回転駆動式のクローラ)を2組有している。このフリッパクローラを用いて、手を引っ掛けて体を持ち上げるような動作を行うことにより、下図のように大きな障害物を乗り越えることができる。



    4. 小型の三次元距離センサを搭載

      三次元環境情報の取得を行うセンサについては、小型ロボットに搭載するため、小型軽量である必要があります。そこで、本研究では、北陽電機製の小型のレーザレンジセンサ(URG)にDinamixel社のサーボモータを取り付けた三次元レンジセンサを製作しました(右図参照).これにより,下図に示すような三次元情報を獲得することが可能となりました.


      (画像をクリックして動画を再生)

    5. 無線LANによる遠隔操縦

      ロボットは,無線LANによって,遠隔から操作されます.下図に本ロボットの制御ブロック図を示します。

    (3)移動探査ロボットの遠隔操縦に関する基礎実験

    平成17年度には、開発した小型移動探査ロボットを用いて、国際レスキュー機構・神戸ラボの模擬倒壊環境実験設備において遠隔操作実験を行いました。操縦者は、オペレータ用のPCの画面上で、ロボットから伝送される画像と距離センサ情報を見ながら、ジョイスティックによって入力を与えて操縦を行いました。図は、遠隔で操作しているオペレータの画面の様子を示しています。

    段差が少なく、明るい環境においては、視覚のみを用いた場合でも、ロボットの遠隔制御は、それほど困難ではありませんが,本実験では、停電した倒壊家屋内という想定であったため、周囲が暗く、良質な画像情報を獲得することが困難でした。さらに、内部は瓦礫が散乱していたため、視覚情報のみでは、その現場の状況を把握することが非常に困難でした。この様な状況において、レーザーレンジセンサによる3次元情報を利用することで、オペレータは周囲の状況を判断してボットが進むべき方向を決定し、遠隔操縦を継続することができました。

    また,共同研究者の大阪大学 清川助教授のグループでは,レーザーレンジセンサによって得られた3次元情報に画像をテクスチャとして貼り付ける,ローカルな3次元情報を既存の地図情報と融合する,オペレータの頭の動きに合わせてヘッドマウントディスプレイ上にインタラクティブにイメージを提示する,などの手法を用いて,臨場感の高い拡張現実感を実現し,的確にロボットを遠隔操縦しつつ効果的に情報収集を行う技術の研究開発を進めています.





    技術試験衛星VIII型(ETS-VIII,きく8号)は,2006年12月18日H-IIAロケット11号機によって,無事に打ち上げられました.同衛星は,その後静止ドリフト軌道への投入,大型送受信アンテナにも成功し,12月27日にクリティカルフェーズが終了しました.今後は,初期機能確認の後,同衛星を用いたJAXAによる基本実験,外部機関による利用実験が行われる予定です.本プロジェクトによる利用実験(探査ロボットの遠隔操縦,情報収集に関する実験,下図参照)は,2007年11月に実施しました.



    ETS-VIII利用実験の概念図

    ●なお,同衛星の打上げおよび今後の利用実験に先立ち,2006年12月4日からの1週間に,ETS-VIIIの通信系を模擬した地上試験装置(シミュレータ)を用いた接続確認試験を,関係各位の協力を得て実施しました.ETS-VIIIの通信系はインターネット・プロトコルの信号をそのまま通すことができるので,専用通信端末を用いてIPアドレス等を適切に設定すれば,非常に簡単に衛星経由でのインターネット通信ができることを確認しました.また,同シミュレータは通信速度や伝送遅延,伝送のエラー率も模擬することができ,実際に衛星を使っているのと同等な現実的な設定で,ロボットの遠隔操縦や画像等の情報の性能を確認することができました.



    ETS-VIII衛星通信系の地上シミュレータ試験の様子
    (配線が複雑に見えますが,利用ユーザとしては簡単な接続のみで使用可能です)




    本研究に関連する主な公表論文・資料

    通信衛星の災害ロボットへの利用
    (平成16年12月16日に開催されたJAXA講演会における講演資料)

    吉田、清川、八木、足立、斎藤、田中、大野、"遠隔ロボットを用いた災害時マルチメディア情報収集技術の研究(遠隔移動ロボットおよび視覚・提示系の開発)"、ロボティクスシンポジア,箱根,(2005年3月)

    Kazuya Yoshida, Keiji Nagatani, Kiyoshi Kiyokawa, Yasushi Yagi, Tadashi Adachi, Hiroaki Saitoh, Hiroyuki Tanaka, Hiroyuki Ohno, "Development of a Networked Robotic System for Disaster Mitigation - Test Bed Experiments for Remote Operation Over Rough Terrain and High Resolution 3D Geometry Acquisition -", Preprints of the 5th International Conference on Field and Service Robotics,Port Duglas,(2005年7月)

    永谷圭司,水内健祐,吉田和哉 "遠隔ロボットを用いた災害時マルチメディア情報収集技術の研究 -小型測域センサを用いた屋内環境マッピングシステムの構築",第 6 回 計測自動制御学会 (SICE) システムインテグレーション部門講演会,熊本,(2005年12月)



    共同研究機関へのリンク

    大阪大学 八木研究室

    大阪大学 竹村研究室 (清川助教授)

    情報通信研究機構 セキュアネットワークグループ

    IHIエアロスペース

    映蔵



    吉田・永谷研の他の研究内容

    宇宙フリーフライングロボットの研究

    月・惑星探査ローバーの研究

    小惑星探査ミッション MUSES-C

    トップページへ.




    (c) The Space Robotics Lab, Tohoku University, JAPAN
    All right reserved.


    For any question, please contact here.